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好きな女性との出会いからの全て
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バスケの大会が終わった。
僕らは優勝した。
ちゆきさんとの約束はなんとか果たす事ができた。

だが、全てはもう終わった事。
ちゆきさんにはただ・・・
「お疲れ様でした。後はゆっくり休んでください」
その一言だけメールをした。

大会中
ヒカルも来ていたから少しは接点があったけれど、
話しはあまり出来なかった。

実はアノ去年の忘年会の件から
ヒカルとは少し距離を置いていた。


毎日頻繁にしていたメールも数が減り、
内容も深く突っ込んだものはなくなっていた。
嫌いになったわけじゃなかったけれど、
あの夜、あやこさんに全てを聞かれていて
ちゆきさんにまで伝わってしまった・・・

それが大きかったと思う。

女の勘は鋭い。

〔優勝おめでとうございます。
なんとなくだけど最近あきくんのメール
素っ気なくて短いような気がします。〕

そんなメールが届いた。

僕は焦ってそれを取り繕うようにメールを打つ。

そんな事ないよ、と。
ヒカルの事はいつでも気にしている、と。
これからも仲良しでいよう、と。

なにを繋ぎとめておきたかったのか。
心の距離は急速に遠のいているのに
ヒカルを全然大事になんてしてないのに
出来ないでいるのに。
自分の都合で・・・ヒカルのご機嫌をとっている。

【もしかしてヒカル・・・俺のこと・・・す・き・・】

初めてそんな風に思った。
いやでもまさか、僕の事を好きになんて?!
少し思って、すぐにそれは閉じ込めた。


練習試合まで一週間を切った。
親睦会の会場も抑え料理や飲み物の手配もした。
持ち込み可能なカラオケでする事にした。

全ての準備は9割終わり残りも一人でなんとかできたけれど、
最終打ち合わせと称して僕らはあやこさんの家に集まった。

「ちゆきさん、帰り話し出来る?」

『ちょっとだけだよ』

密会の約束をしていた。
実に一ヶ月ぶりの密会だった。

ドキドキしないわけがない。
頭の中はそれで一杯になっていて、
あやこさんの家から早く帰りたかった。

帰りたかったけれど、ちゆきさんとあやこさんは
マリとタツヤの悪口で盛り上がって帰ろうとはしない。
予定の時間を大幅にオーバーして
やっと打ち合わせは終わった。

お互いの車で来ていたから、
あやこさんの家を出てから
電話をかける。

「おそくなっちゃったね。」

『そうだね』

「話し大丈夫?」

『ちょっとだけだよ?』

「うん・・・わかってる」

わかっていたかどうか・・・

ただ、いろんな事があった一ヶ月。
もうちゆきさんと密会なんて出来なくなると思っていた。
ちゆきさんに今夜・・・
触れる事は出来るんだろうか。

期待と不安が入り混じり、
僕らはいつもの丘へ向かった。


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休日_

僕は一人神社へ向かった。
地元では結構有名な大きな神社。

神様にお願いする事くらいしか僕には出来ない。
後は、メールで励ますくらいかな。

とてもよく晴れた暖かい日だった。

お参りをして心からちゆきさんの合格を願った。
それから御守を一つ買って、絵馬も書いた。

どうやって渡そうかな?
御守なんて重いかな?

そんな事を考えていた。


僕は「頑張れ」という言葉があまり好きじゃない。
頑張っていない人は少ないだろうし、
そう見えない人だってその人なりに頑張っているはず。

誰だって頑張っているんだからそんな人に
「頑張れ」というのは酷だと思っている。

だから僕は人に「頑張れ」とは言わない。
「頑張るな」とは積極的には言わないけれど、
無理せずに自分のままで・・・
自然体でいればいいい。
そう言う事の方が多い。

ちゆきさんは頑張っていた。
試験のために大好きなバレーも休み
飲み会も我慢していたのかもしれない。

すごくすごく試験に合格したがっていた。
緊張しいのちゆきさんは同時に不安がってもいた。
だからその緊張だけでもほぐせたらな、と思っていた。

「ちゆきさん?
試験緊張するよね♪
でもさ、ちゆきさんならきっと大丈夫だよ。
すごく頑張ってるもんね。
試験は自然体で受ければ大丈夫!
リラックスする事を頑張るんだ(笑)」

そんなメールを打った。


そして

今年初めてちゆきさんに会う日が来た。
バレーで会えないから無理やりに電話して
お昼休みに会った。
ほんの5分くらい。

ベタだけどコアラのマーチと
キットカットを買って
そこに御守を紛れさせて
さりげなく渡した。

「これ、食べてね」と。

御守がプレッシャーにならずに力になればいいな。

ほんの5分だったけれど
今年初めて会ったちゆきさんは
やっぱり綺麗で素敵でいい匂いがした。
ドキドキしてしまった。

去年の年末から実に1ヶ月が経っていた。



試験当日がやってくる。

その日は奇しくも僕はバスケの大会だった。

「俺はバスケで優勝してくる。約束する。
だからちゆきさんは試験でリラックスすること約束して♪
試験、楽しんできてね♪」

朝、メールを打って僕は出かけた。

その日の大会にはヒカルも来ていた。


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僕の誕生日まではもう少し日がある。

その前にヒカルからメールが来た。

〔今日、地元の体育館でバスケやってるんですけど
良かったら来ませんか?〕

ヒカルと純粋にバスケしたこともなかったし
僕自身も空いていたのでその提案に乗る事にした。

なんとなく一人で行くのが照れくさかったから
友達を一人誘っていった。

ヒカルは友達4人くらいと来ていて
シュート合戦をしたり軽くゲームをしたりと
汗を流し合った。


〔聞きましたよ〕

「ん?何を?」

休憩していたら、ヒカルは唐突に話しを始める

〔練習試合と懇親会するんですね〕

「ああ・・・誰に聞いたの?」

〔あやこさんです。試合と懇親会あるから
ヒカル休みとっててね!って(笑)〕

「そっかそっか」

〔うちと、あきくんのチームと後どこ呼ぶんですか?〕

「Bチームかな・・・」

〔え?Bチームですか?何でですか?〕

「え?いや・・・」

〔もしかして・・・マリさんとタツヤさん関係あります?〕

「ヒカル、鋭いな」

〔えーだってわかりますよ!組合せがおかしいもん(笑)〕

タツヤがBチームの女と付き合ってるんじゃないか?!
という噂は僕は知らなかったけれどそこそこに有名な話しだったようで
ヒカルも御他聞に漏れずその事を知っていた。
むしろマリとの事を知っている人の方が少ない。

だから、マリとの事を僕に聞かされたヒカルはすぐに気づいた。
僕達の悪巧みに。

〔誰の提案だったんですか?あきくん?〕

「ん・・・あやこさんが言い出して、ちゆきさんが乗っかって俺が段取りしてる。
でも、この事知ってるのはヒカル合わせて4人だけだからな・・・
内緒にしておいてくれよ?」

〔わ、わかりました(笑)〕

「でも俺も結構大変なんだぜ?
チーム同士の調整に親睦会の準備にさ。
しかも目的がバレーじゃなくて
その3人を飲み会の席で見てみたいだなんて・・・
罪悪感感じるよ」

〔でもやっちゃうんですよね?〕

「そうだな・・・やっちゃうんだよな・・・
コレは俺の禊ぎだから」

〔みそぎ・・・ですか?〕

「うん・・・去年のアノ事のね」

〔そうですか・・・〕

ヒカルは笑っていたけれど少し物悲しい目をしていた。

結構な時間バスケもしたので
僕らは体育館をあとにした。

このまま突き進んでもいいのか?
そんな風に思いながらも止まる事は出来ない。
全ては動き出してしまった。

親睦会の会場も抑え
料理の準備も8割は整った。
残りの2割も自分一人で出来たけれど
わざと残しておいた。

最後の打ち合わせといって
ちゆきさんと会うために・・・

年が明けて未だちゆきさんには会えない。
早く会いたい。

『もうすぐ試験だからそれが終わるまでは
他の事出来ないの・・・』

そういわれていたからなんとなく
メールも電話も遠慮していた。

試験か・・・

もっと何か僕にできる事はないかな?
そう思った僕はとある場所へ向かっていた。

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電話を切った後少し考えた。
考えた後行動に出た。直ぐに。

練習試合と親睦会。

やらなければならない事は多い。
しかも、あやこさんやちゆきさんの
悪巧みを組み込まなければならない。

順番に少しずつクリアしていこう。そう思った。

先ず自分のチームの監督にお伺いを立てなければならない。
監督は優しい人だったが、逆に言えば優柔不断だった。
そのくせ、プライドだけは高く、何事においても
自分がすっ飛ばされれば面白くない。そんな人だった。

練習試合から親睦会までの事を言うと
旗色はあまりよくなかった。
時期がまだ早かった事や試合はまだしも
なぜ、親睦会まで全体でしなければならないのか?

そんな感じだった。

それでも多少強引に説き伏せ、
半ば無理やりに承諾をもらった。
感謝の言葉は忘れない。

次に参加チーム

Aチームはあやこさんが集めてくれるという。
タツヤとマリが来なければ ”意味” がないから
親睦会まで含めてお任せする事にした。

問題はBチーム

顔見知りではあったけれど、そこまで仲良くはない。
たまたまアタッカーの一人が僕の後輩だったから、
そこからお願いをした。

やはり時期が早すぎるという事で
紆余曲折あったがなんとか練習試合は了解をもらった。
親睦会はまだ未定だった。

二人の悪巧みである「魔の三角関係」は少なからず実現に向かった。
親睦会で一番見てみたかったみたいだからまだわからないけれど。

体育館も押さえ練習試合は2月上旬に決まった。

『あたし達も色々と手伝うからさ♪』

そういったちゆきさんの言葉を思い出していた。

その事を使って会えるんじゃないか?

年が明けて1週間。
まだ彼女には会っていない。
声を一度聞いたきりだ。

彼女にメールしてみる。

「ちゆきさん?1月中に新年会やりたいです。
メンバーは誰でもいいけど少人数でさ
ちゆきさんに会いたいな~」

『あたし実は1月の末に試験があってね。
それが終わるまでは無理なの。ごめんね』

そんな返事が返ってきた。

試験?

聞くと結構難しい試験みたいで
きちんと勉強しないと受からないそうだ。

「そうかわかった。
じゃあ俺、たくさんたくさん応援してますね!
試験大変だろうけど、頑張ってください。
終わったらたくさん楽しい事しましょうね♪」

『ありがと♪
受かりたいから頑張るからね』

試験が終わるまではバレーも来れないという。
バレーも飲み会もなければ会えるはずもない。
実に一ヶ月以上ちゆきさんに会うことは叶わない。

それでもちゆきさんを応援したかった。
僕にできる事ってなんだ?

それは

ただ、見守る事だけだった。

そんな中・・・

もうすぐ僕の誕生日がやってくる。


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「もしもし?」

僕はすぐにちゆきさんに電話した。
1週間以上ぶりに彼女の声を聞いた。

『あのね・・・(笑)』

なにを笑っているのか?

「どうしたの?なに話しって?」

『実はね・・・昨日あやちゃんと話しててね。』

「うん」

『今度さ、練習試合したいなって思ったの
それでその後親睦会みたいなの?』

「バレーだよね?」

『そうそう♪』

「いいんじゃない?いつごろ?」

『だからその段取りをあきくんにお願いしようかなって(笑)』

「俺?いいですよ。チームとか決まってるんですか?」

『そうだね・・・あたし達のチームをあやちゃんのとこでしょ。
後は・・・Bチームを誘って欲しいの(笑)』

「え?Bチームですか?!
なんで?Bチーム?」

理由は大体わかっていた。
Bチームにはタツヤが付き合っている、
と言われている女性がいた。

『昨日ねあやちゃんと話してて
なんか見てみたいってあやちゃんが言い出してさ』

「大体わかったよ・・・」

『で、あきくんに段取りやらせちゃおうよ!
って話しになったの(笑)』

Aチームのタツヤとマリ
Bチームに噂の彼女
そして僕らのチーム

3チームで練習試合をして親睦新年会
そこで魔の三角関係を見たいと
言い出したのはあやこさんだった。
そのあやこさんの考えに乗ったちゆきさんが
僕に電話をかけてきたという訳。


「それは俺の禊ぎですか?
そしたら全部ゆるしてくれるの?」

『禊ぎ・・・そんな訳じゃないけど
あやちゃんがあきくんにも罰を与えないとって(笑)』

「わかりました。全部の段取り俺がしますね・・・」

『あたし達も手伝うからさ♪』

「しかし・・・二人とも悪い事考えますよね(笑)」

『だってどんな風になるか見てみたくない?』

「ん~見てみたいような、見なくてもいいような?」

ちゆきさんは本当に悪戯顔をしていたと思うような声で話していた。

これからやろうとしている事は
今まで一度もやった事がない、
初めての事ばかりだった。

不安はある。
クリアしなければならない課題もたくさん。

それでもそれでちゆきさんやあやこさんに
許してもらえるならば・・・
そう思い全てをやりきる決心をする。

それが客観的に見たらどんなに酷い事だったとしても。

3チーム全員
表向きは親睦を深めるための試合と飲み会。

本当の理由は僕ら3人しか知らない。
それ以外の人をだます事になる。
誰も気づかないとしても結果的にはそういうことだ。

こんな事をして大丈夫かな・・・

心がそうつぶやいている。

矛盾を感じながらも
罪悪感と禊ぎを天秤にかけて

僕は二人の悪巧みを進行させていく。

わかっていてやっている僕も同罪だった。

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