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好きな女性との出会いからの全て
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『もしもし・・・』

僕はつばを飲んだ。
ちゆきさんは思ったより明るい声だった。

「ちゆきさん・・・
よかった・・・電話出てくれたんだ」

『そう?』

彼女はなぜかあっけらかんとしていた。

「ちゆきさん、今回の事色々とごめんね」

『ううん あたしの方こそごめんね』

「ううん ちゆきさんは謝らないで。ちゆきさんは悪くないよ
悪いのはガキだった俺なんだから ごめんね」

そこから僕らは色んな話をした。
いや、正確にはちゆきさんの話をたくさん聞いた。

西小の人達がみんな楽しくやっていたわけではなかった事
優勝したけれど、納得してない人もいた事
一中の人達が言ってくれたことは僕のためでもあったという事
いつの間にかバレーが大好きになっていたという事
僕らの愛好会でいつか優勝しようねという事

僕はいつのまにか涙を流していた。
ちゆきさんに気付かれないようにしなくちゃいけない
そう思ったけれどあなたは気付いていたかもしれないね。

今回の出来事が自分がしてしまった事
その事を後悔し悔しくなって涙を流した。

優勝

それは素晴らしい事だと思う。
そしてそれは簡単に成し遂げられる事ではない。
なにかを犠牲にしなければできる事ではないのかもしれない。

けれど

チームメイト、
対戦相手、
応援してくれるみんな

それらをリスペクトしなければ
なんの成長もないと思う。
そう思った。


そしてそれは

ちゆきさんが気付かせてくれた。

僕は

あの時

ただ一中の人達に言われただけだったら
なんの変化もないままに
不貞腐れて、または無視して、
ただの負け惜しみだろ?と
過ごしていただけだっただろう。

好きな人に
厳しい事、辛い事を言われた。
僕はそれに反発した。

それでもちゆきさんは

僕のことを

一番気にかけてくれた
一番優しくしてくれた
一番厳しくしてくれた

僕のことを
一番引き上げてくれたのはあなただよ


ありがとう ちゆきさん


そして僕がどう変わっていくか。
どう変わっていったか
それを見てくれるのはちゆきさんだと思っている。

そしていつの日かちゆきさんに優勝を味あわせてやるんだ。
それがちゆきさんの気持ちに応える事だと思った。
簡単な事じゃないけれど僕は約束をした。


バレーだけじゃない
人間として心から成長したいと思った。


そしてこの日から

僕のちゆきさんに対する気持ちは
少しずつ変化していった。

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ちゆきさん・・・大好きだよ


第七部  完
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ごめんね・・・もうなにもいわない・・・

このメールをもらって『おわった・・・』
と僕は思った。
今まで僕らには築いてきたものはない。
些細な事で崩れてしまうような気がした。
些細な事ではなかったんだけど。

大会の前日
ちゆきさんの気持ちが伝わってきたような気がした。
僕の思いも受け取ってくれたような気がした。
それが錯覚が現実かはわからないけれど
僕がいい気になっていたのは確かだった。

一人でいい気になって
ちゆきさんの気持ちも考えずに突っ走り
考えている事は自分の事ばかり

その夜は眠れなかった。

いろんな事が頭をかけめぐり、
後悔と自責の念が次々に心につきささる。

僕はなんて馬鹿だったんだ

そう思った。

そして明け方
ちゆきさんにメールを送った。

「昨日のメールごめんなさい。
あのバレーの日、ちゆきさんに言われるまでもなく、
一中の人達に怒られました。
凄く頭に来て、凄く落ち込んで…

ちゆきさんにも言われてショックだったのもあるけど。
俺のしたことは間違ってたのかな・・・

出来るなら時間を巻き戻したいよ。

メールじゃすれ違ってただ傷つけちゃうだけなので
どうしても話がしたいです。

このまま、ちゆきさんと終わりたくない。

しかも原因が大好きなバレーなんて。」

情けないメールだけれどこのメールを送るのが精一杯だった。

そしてちゆきさんからこの事件における最後のメールが届く。

私は ただ バレーの勝ち負けでなくて 
いろんな面であきくんだからこそ 言ってくれる人がいるんじゃないかな?
って思ったの。
ごめんね  試合でまけたからじゃないんだよ 
私ね 西小で バレーの練習みてないけど  楽しくやってた?
あたしちょっと聞いたんだけど、味方からも色んな風に思われてたみたい
あきくんは解ってた?
絶対勝ちたい  アタックきまりたい 真剣にやってる それが何がわるいんですか?
って言われたら  私も何も言うことできないし
結果  優勝したから 良かったと思うけど  喜んでる人ばかりじゃなかったのは確かなんだよ 

皆 まわりの人の目もみえなきゃって思うの 私は
ごめんね    
だから  たぶん あきくんは 試合のとき 
皆の応援聞こえなかったんじゃない?
聞こえないと思う、違うかな? 

間違ってたら ごめんね

私もだけど自分では自分でのこと解らないし
人から言われて はじめてわかることあるんじゃない  

また 余計なことメールしてるね    
なんでだろ あきくんのこと皆にいわれたから 
私も頭にきて皆に 言ってたつもりが フォローは余計なことだったね 
本当にごめんね  他の人だったら無視するんだけど  
あきくんに余裕をもっとみにつけてほしかったから・・・
長々とズルズルと ごめんなさい   またきずつけたら   ごめんなさい


僕が自分の事ばかり考えていた時、
ちゆきさんはちゃんと僕の事を考えていてくれた。
僕の事を見ていてくれた。

僕は自分の幼稚さに自分で呆れた。
情けなくなった。
変わらなくては・・・と心から思った。


そして、僕はちゆきさんに電話をかけた。
コール音が鳴り響く・・・
僕の心臓の音も鳴り響く・・・

電話が繋がるまでの刹那の時間が永遠にも感じられた。
ちゆきさんは電話を受け取るのか・・・

『もしもし・・・』

電話がつながった

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僕は成長できるのかな・・・ちゆきさん

次回第七部最終回です。
僕の自分勝手なメールに対して
大会の日以来初めてメールが届く・・・

ちゆきさんからのメールが・・・


ずっと おめでとうって いいたかったけど 西小との試合で
一中の色んな人達が あきくんの 試合の態度が悪いって
ガムかみながらしてたの?
自分だけ勝ったみたいな 態度はだめだなぁって  みんなからいわれたの 
色んな事情があって  絶対勝ちたかっただけだからって
自分なりにフォローしたつもりだけど なんか疲れたの  ごめんね 
怖い顔してたし  なんか わき合い合いの西小じゃないみたいに 
見てるみんなが言ってたの  
 
負けたからいってるんだろって思うかもしれないけど 
そんだけ 態度にはでてたみたいよ  ごめんね 
そんなこといって 私は嬉しかったけど 聞いてたら 結構つらいものがあり 
疲れもあり メールするのも疲れたの

西小卒業したし  わたしが あんまりかかわるのも
やめたほうがいいのかなって考えちゃって
私が卒業したら 優勝したとか 言われたし
なんか 凄く寂しくて 昨日は涙とまらなかったの 
でも 私は いつも笑ってなきゃって 思いながら いたんだけど  
辛かったの    ごめんね

でも  西小優勝できて おめでとう   凄く嬉しかったよ


僕はあまりにも幼稚だった。拙かった。
ちゆきさんの気持ちも知らずにはしゃぎ、
自分勝手なメールばかり送って・・・

自分が、自分が、と。

そしてこのメールをもらった時も納得できない自分がいた。
ただの負け惜しみだろ?と。

そして更に最低なメールを返してしまう


「ガム食べながらしたらダメなルールでもあるんですかね?

態度?

真剣したら駄目なの?

きっとそっちが勝ったら全然違うんだろうけどね。

ちゆきさんに愚痴っても仕方ないけど。

俺達はさ、負けて悔しいと思う事はあるけど相手をけなしたり、
馬鹿にしたりはしたことないよ?

一中は最近負けた事ないから調子に乗ってんじゃないの?

フォローいれて疲れるより、馬鹿な事言ってるって、無視して欲しかったよ。

俺がなんかするといつもちゆきさんを傷つけちゃうね。

俺はただ勝ちたかっただけ。

そんなに悪い事?

ガムは価値感の違いだろうね。

ちはるさんを傷つけるくらいなら勝たなきゃよかったよ」



ごめん・・・もうなにもいわない・・・

ただ一言だけのメールが届いた。

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馬鹿な僕をしかってください
コメントも待っています
大会が終わった。

大会後、ちゆきさんに何度もメールをするが返って来ない。

こんな事は僕らが出会ってから初めてだった。
一日と欠かすことなくメールしてきた僕ら。
頻度は僕の方が高かったにせよ、ちゆきさんから
3日もメールが来ない事は初めてだった。

ある事件が起きる。
事件という程の事ではないけれど。
その日まで僕は小さかった。
いや、今でもとても大きいとはいえないけれど、
幼稚だった、ガキだった、バカだった。



人は普通
だれかのことを好きになったとき
その人の事を知りたいと思うだろう。
自分の事を知ってほしいと思うだろう。


そしてまた

誰かを好きになったなら
その人の事を考える
一日の大半を
好きになった人のことばかり考える

僕も彼女の事を考える
ちゆきさんのことばかり・・・

彼女の事で頭がいっぱいになる
ちゆきさんで心がたくさんになる


いつのまにか

彼女の気持ちを考えているつもりが

彼女がどう考えているか?に、すり替わる



いつのまにか

彼女を想っているつもりが

自分をどう想っているか?に、すり替わる


僕はちゆきさんの味方になりたかったはずなのに
ただ一人でもいい、ちゆきさん理解者になりたかったはずなのに

気付いたとき

僕は自分の事しか考えていなかった。

ちゆきさんに会いたい
どうして会ってくれないの?

ちゆきさんからメールが欲しい
僕がたくさん送ってるのにどうしてくれないの?

たくさんおしゃべりしたい、電話もしたい
どうして他の人としゃべってるの?
どうして教頭とばかり会うの?

恋愛は一人じゃ出来ない。
片思いでさえも相手はいる。

僕は幸せだと思う。
片思いとはいえちゆきさんは僕の思いを受け止めてくれている。
そしてそれは危うく、たゆっているけれど
僕の大切な宝物で、決してなくしたくないものだ。

僕はそんな宝物を自分で地面にたたきつけていたのかもしれない。

そう・・・
僕は自分の事ばかりだったんだ・・・



大会が終わって
メールをしてもメールが来ない・・・

そのうちに

愛好会の練習が始まった

ちゆきさんと会う

どこかぎこちない

練習が終わって僕は電話をかけた

彼女は電話にも出ない。

そして

僕は再びメールをした。

「ずっとメールしてたけど、ちゆきさんの心には届いてないのかな?
たくさんメールしちゃってごめん、このメールもごめん

でもね、昨日も今日もその前もずっとちゆきさんからのメール待ってた。

でも忙しいんだろうなって。
俺も我慢してた。

『おめでと。がんばったね』って、
ちゆきさんにだた一言いってほしかっただけなんだけどね」


ちゆきさんの気持ちも知らずに
僕は独りよがりなメールを送ってしまっていた。

そしてちゆきさんから久しぶりのメールが届く。

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その日の夜 僕は飲んだ。
飲みに飲んだ。

普段は殆ど飲まない酒を。

バレー大会の慰労会
20年ぶりの優勝
盛り上がらないはずがない。

こういう会って普通は前もって出欠をとり、
店に予約するものだ。
しかしこの日思いがけない優勝で当日参加が増えたのも
当たり前だったのかもしれない。

慰労会は各学校毎に行われるのが常だ。
当然ちゆきさんはいない。
去年まではこの席にいたのに・・・

一緒に優勝を味わいたかった。

それが僕の思いだった。

念願だった一中戦の勝利
嬉しかったはずの勝利
一中のあの人を見返しての優勝

しかしこの時の僕の心は晴れていなかった。

皆が優勝で盛り上がっている。
勝利の美酒に酔っている。

なぜか・・・


大会が終わった後、こんなことがあった。

それは西小OBの一中の選手の人からいわれた。
僕もよく知っている人だった。

「あき、おまえ、試合中かなり態度わるかったぞ?
リクリエーションだってわかってる?
目が真剣すぎるだろ(笑)」

『はぁ?』
なにいってんんだこいつ?と思った。
もちろんそんな事は口には出さない。

でもきっとムッとしていたかもしれない。

あの西小を馬鹿にした人からも言われた。
「あきくん、ちょっと目が怖かったかな
いつもあんなだったっけ?
試合中あたしのこと全然みなかったよね(笑)」

当たり前だろ?!
あんたに西小をバカにされて勝ちたくて
ここまで頑張ってきたんだよ!

ところが

どうやら一中の人達の大勢が
僕の態度や西小の勝ち方に疑問をもっていたようだった。

確かに僕はリクリエーションとはいえ
勝ちたくて真剣にやった。
顔も本気だったかもしれない。

けどなんだ?

真剣に勝ちたくてしたらダメなのか?

この時

僕は一中の人達が言っているのは
ただの負け惜しみだと思っていた。

と、同時に

僕は自分が一ヶ月間してきた事を振り返り
もしかして間違っていたのか?

と、思った。



そんな事が心の片隅にありながら飲んだ。

心は晴れていなかったけれど、優勝は優勝だ。
心の迷いをしまいこんで盛り上がる事にした。


二次会に行く事になった。
カラオケだ。
行くとそこには一中が来ていた。

ちゆきさんもいた。

ちゆきさんと会えた嬉しさと、
酔っていたせいもあり僕はこんな事をいってしまう。

「ちゆきさん卒業したら、西小優勝しちゃったね」

この時の僕の言葉がどれほど彼女を傷つけたかなんて
全然わかっていなかった。

ただ、ちゆきさんに
「優勝おめでとう」
といって欲しかっただけだった。

しかし、この時のちゆきさんの心は
その言葉だけでなく、もっと別なところでぐちゃくちゃになっていたんだ。

それも、全部僕のせいだった。

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