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好きな女性との出会いからの全て
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決戦の朝
ちゆきさんからメールがきた

おはよ 昨日はありがとね 今日はがんばろうね

僕の全身に力がみなぎる。


体育館にいくとみんな集まっていた。

教頭もちゆきさんもりょーこさんは応援できていた。

結局出るかどうか分からないといっていたちゆきさんは
レギュラーになっていた。スタメンだ。

ちゆきさんと朝の挨拶を交わす。
夕べの事があって少し照れる。

なんだか不倫している2人がそそくさと挨拶を交わしているように感じた。
人の目があっても気にする事はないんだけれどね。
当事者だけが感じるなにかがある。罪悪感もあったかもしれない。



第一試合は二中戦だ。
僕にとっての決戦はこの時ではなかった。

この日
優勝とかそういうのは正直どうでもよかった。
二中戦も僕にとっては前座だった。
そう。。決戦は一中戦

二中戦はセットカウント2-0で圧勝だった。
戦った自分達も驚いていた。

いつの間にか僕らは強くなっていたんだ。


そして一中戦が始まる


「今まで厳しく練習してきたけど、今日はまずはバレーを楽しもう
そして、最後までどんなボールも諦めないで繋ごう!」 

僕はそうみんなに檄を飛ばした。

それでも誰よりも真剣だったのは僕だ。
きっと楽しむ余裕なんかなかったと思う。
自分に言い聞かせるように言った。

第一セット 15-8で勝利
第二セット 9-15で敗北

最終セットが始まった。

予想通り一中は強かった。
しかしこの日の僕らは何かが違った。

練習でも拾えなかったようなボールでさえも繋ぎ、
ねばりにねばっていた。

序盤
相手にリードをゆるす
6-9で負けていた。

15点マッチでこの点差は危険だった。
しかし諦めるのは早い。
なによりそんなつもりはなかった。

試合中も檄を飛ばし続ける。

9-9に追いついた。
一中の選手達はみんな疲れていた。
僕らも疲れていた。

この時

僕の足は肉離れを起こしていた。
しかし足の痛みなどどうでもいい。
むしろ感じていなかったのかもしれない。

一進一退の展開が続き12-12まで試合は進む。

足が痛む、ような気がした。
「負けたくない!絶対に勝ちたい」
そう思った。

なにが僕をそこまでさせたのか?
西小をバカにされたからか?
ちゆきさんを敵にまわしてまでも・・・

勝負所で一中のミスとこっちのアタックでマッチポイントを迎える。

14-12

後一点だ。
僕らのローテは最高の布陣のところだった。

トスが上がった

とても高いトスだった

誰かがジャンプした

強く、ボールをたたきつけた

そのボールは相手のコートにたたきつけられた


その瞬間

会場全体が沸いた

そんな気がした。

男も女もない

全員で抱き合って喜んだ

涙を流した人もいた

急に足が痛みだす


僕らは勝った

その瞬間が一番最高の瞬間だった。

一中に勝ちたい!
ただそれだけでやってきた一ヶ月だった。
僕は本当に嬉しくて、泣きそうになった。

そこを目指してきたわけではない。
ただ一中の勝ちたくてやってきただけだった。

それでも結果はついてきた。

僕ら西小は優勝した。
実に20年ぶりのことだったという


しかし

僕らの勝ち方、やり方、態度は波紋を呼んだ。

そう・・・

最高だったのは勝った瞬間までだったんだ。

この後、僕は人生の谷へ落ちる
大げさかもしれないけど。
ちゆきさんとの関係が一番大切だった僕には
それが宝物だった僕にとっては、

つらい日々が始まった。

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ちゆきさんとどうなってしまうのか?!
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その日は飲み会だった。

飲み会だった、といっても僕がちゆきさんと会うために、
密会するためだけに開いた飲み会だった。

とはいえさすがに大会前日。
そんなに遅くまではいられない。


早く帰らないと、早く帰らないと
と、二人で言い合いながら僕らは帰らない。

そして・・・

いつの間にか僕らはくちびるを重ねていた。
未だに本当のキスは出来ない。

本当の深いキスではないけれど

この日

ちゆきさんは僕のキスを受け入れてくれた。

酔っていたせいかもしれない。

そのまま彼女を抱き寄せた。

気持ちが伝わったのか? 僕の。

ちゆきさんも僕を抱きしめてくれる。

頭の中は興奮と冷静が入り混じっている。
ちゆきさんはどうだったんだろう・・・


そのまま


服を一枚ずつぬがしてゆく。
僕は彼女に触れる。

彼女は感じていてくれていた。

今までのどんな時よりも
ちゆきさんをそばに感じた。

心の距離が・・・

近く感じたんだ。

「セックスがしたいの?」
僕の頭の中で誰かがささやく。

「そうじゃないだろ?」
また別の誰かがささやく。

興奮の中

僕はちゆきさんの一番大事な部分にまで
手を伸ばした。

冷静な僕がどこからか見ている。

「いいのか?
お前はそれでいいのか?」
そういっているような気がした。

そこで僕の手は止まった。
ちゆきさんにとめられたわけではない。
自分で止めた。

ちゆきさんも冷静さを取り戻す。



普通

好きな女性と二人きり
抱き合い
唇を重ね
お互いに触れ合えば

男としては興奮しないはずがない。
熱を持たないはずがない。

しかし僕はそうならなかった。
彼女に止められたわけではない。
自分で、自分でだった。

その後

服を着た後、もう一度二人で抱き合った。
そして軽くキスした。

「明日大会がんばろうね」

「そうだね」

この日

僕らの心の距離は確実に近づいていた。

そう思った。
僕の気持ちが伝わった、と。

いや
伝わっていたのは前からだったかもしれない。

この日

彼女が僕の気持ちを受け入れてくれた。

そんな気がした。


そして

いよいよ決戦の日を迎える。

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練習はかなり厳しいものになっていた。
本来、PTA同士の交流大会だ。
リクリエーションの延長でもある・・・

自分も去年までは真剣にやりながらも楽しんでいた。
それが一番だった。
ちゆきさんがいたということもあったのかもしれない。

しかし今年は違う。

ちゆきさんはいない
そして僕は誰よりも真剣だった。

一中に勝ちたい・・・

本当にただそれだけだった。

西小の選手のみんなにも監督にも
「打倒一中!」
を宣言し、僕はみんなを巻き込んでいった。

そしてその「勝ちたい気持ち」は僕から
周りを見る余裕を奪っていった。
他人を思いやる心を奪っていった。

PTAの練習期間の約一ヶ月間
愛好会の練習は休みになる。
そしてちゆきさんは西小にはいない。

会えない日々が続く。
密会とは関係なくただ会えない日々。

それでも

僕はバレーに打ち込んでいった。

そして

バレー大会前日を迎える

この日

僕らは密会をした

最後になるかもしれない密会だった・・・


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『西小は一中には勝てないよ』

とある人に言われた言葉だ。
ちゆきさんではない。

僕らの町には7つの小中学校がある。
それは前回も書いた。
5つの小学校と2つの中学校

小学校は中央が1で後は東西南北。
中学校は一中と二中だった。

僕らの小学校は町の西に位置し、西小だ。

ちゆきさんと同じ愛好会のバレーチームに
今度のバレー大会で当たる一中の人がいる。

『そういえば今度のPTAのバレー大会、
俺ら一中と当たるんですよね~』

僕は言った。

その日は愛好会で飲み会だった。

『一中強いからな~勝てないだろうな~』
僕は謙遜というわけではないけれどそう言った。

『そうだね。西小は一中には勝てないよ(笑)』

同じバレーの仲間にそう言われた。


普通

そんな事言われたとしてもサラリと流すのが
大人の対応だと思う。
だけど僕はその言葉を流す事が出来なかった。

確かに西小は人が少ない。
一中に比べればバレー経験者も少ないだろう。

けどそんな言い方ってあるか?

しかも普段一緒にバレーしている仲間に言われた事が
余計に許せなかった。

この時僕は絶対に一中に勝つと心に誓った。

そう・・・
どんな事をしても勝つと。
いや反則をするわけではないけれど。

今考えると
幼かったんだな~と思う。
サラリと流せる大人だったら良かったと。

まだ僕は幼稚だった。




飲み会の帰り

またちゆきさんと密会をした。
その日はたくさん話をした。

その日いわれたあの言葉もちゆきさんもしっかり聞いていて、
「あんな言い方はないよね。あたしも思ったよ」
と言ってくれた。

『そうだよね!ちゆきさんには悪いけど
今回は絶対に一中に勝ちにいきますから。』

「え~そんなにむきになったらいやだよ?」

『ちゆきさんの大好きな西小がバカにされたんだよ?
くやしくないの?』

「そりゃくやしいけどさ・・・
あたしも一中なんだよ?出るか分からないけどさ」

『そ、そうだけどさ・・・でもやっぱり俺は西小をバカにした
あの人を許せないよ!絶対天狗になってるし
高くなった鼻をへし折ってやりたい』

確かにその人はバレーが上手かった。
愛好会でも中心的存在で女性だったけれど、
チームのポジションまで口出しするような人だ。
監督を差し置いて、でもだ。


僕は完全に頭に血が昇っていた。
そしてそれは冷める事はなかった。

ちゆきさんと対戦する。

その本当の意味を僕はわかっていなかった。

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第七部 成長

またバレーの季節がやってきた。
ちゆきさんと近づいた思い出の。

僕が今、
ちゆきさんと繋がっていれる一番の要因はバレーだ。
それは間違いないと思う。

そして今年のバレー大会にちゆきさんはいなかった。

正確にいうと参加はしていたが、
僕らの小学校を卒業したために、
その上の中学校での参加だった。


ここでバレー大会について少し振れたいと思う。
本編に関係あるかどうかは分からないけど。

僕らの町では小中学校が合わせて7つある。
小学校が5、中学校が2だ。
その義務教育の7つの小中学校のPTA対抗で
バレーボール大会があるのだ。

中学校が小学校に対して2つと少ない。
当然いくつかの小学校から中学校へと上がっていく。

だから中学校は小学校よりも人が多い。
当然親の数も多いから必然的に中学校は強かった。

僕らの小学校は7つの学校の中でもとりわけ人が少なかった。

だから、人数が多い学校に比べて人員確保が難しく
お世辞にも強いとはいえなかった。

それでもチームワークという点においては
素晴らしいものがあり、個々の能力をそれでカバーしていた。

2年前、ちゆきさんと出た2度目のバレー大会。
結果は準優勝だった。
それは奇跡に近い成績だったのだ。

あれから2年経って素人だった僕も少しは上達したのかな・・・
1年前、ちゆきさんを追ってバレーの愛好会に入ったし。
あの頃の僕とは違うところを『ちゆきさん』に見せたかった。

そう、今年はちゆきさんとは違うチーム。
ちゆきさんとは違う学校。
全ての行事を通じて初めてちゆきさんと袂を割った。

対戦は抽選で行われる。

各学校、2チームとの試合だ。

当然

当たらないチームも出てくる。
くじ運のいいチーム、そうでないチームと出てくる。



いや、もしかしたら今も思われていたことかもしれないけれど
僕らの学校はどちらかといえば、当たればラッキー!
と思われる側の学校だった。

つまり弱いと思われていたのだ。

僕はそれが悔しくてバレーを頑張ってきたというのも少なからずある。
決してちゆきさんのためだけに愛好会に入ったわけではない。

そんな僕らの学校の対戦相手・・・

それは中学校の2チームだった。
くじ運でいうと最悪のところを引いた。
最強の2チームと当たる事になった。

そして同時にそれは

ちゆきさんとの対戦でもあった。

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