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好きな女性との出会いからの全て
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僕は悩んだ。
教頭を追い詰めたわけじゃないけど
結果的にそうなってしまって
ちゆきさんの思いは教頭に向かう。

元々僕に向けられるはずもなかったけれど
「あたししかいない・・・」そう思わせたくなかったのは事実だ。

『ごめんね・・・』
と、ちっとも悪くないちゆきさんが謝るのは辛い。

僕はメールを返す。
また打算的なメールだ。

【俺の方が悪かったんだから】
【教頭も疲れてストレス溜まってたんだよ】
【予想外にちゆきさんが来て嬉しくて余計酔ってしまったんだよ】
【あの時もう仲直りしたし全部水に流すってお互いに、ね】
【学校でも教頭の手助けをするつもりだし】

そんな内容。
僕は最低だ。
半分も思っていない。
むしろ・・・もう教頭を見限っていた。

それをちゆきさんに言う事は決してない。
あくまで僕は味方だと。

ちゆきさんを安心させたかった。
上辺だけだとしても、だ。

ちゆきさんに思わせたくなかった。
『あたししかいない・・・』と。

ちゆきさんからメールが来る。

『やっぱりごめんね』
『でもやっぱり教頭は可哀相』
『あたしが怒られてる気分だった』
『あきくんを責めてるみたいでごめんね』
『教頭も学校で色々大変なの』

『あたしがいないとダメなんだな~ってつくづく思った』

僕の心は折れそうになる。
けど強くなっていたはずの心はそれに耐える。
誤魔化そうとなにをしようとこのくらいでくじけてなんていられない。

ちゆきさんの傍にいるために
彼女の味方をして
教頭の味方の「振り」をして
なりふり構わず・・・

神様はそんな僕に運をくれたんだろうか?

今年最後のバレーの大会が一週間後に控えていた。
バレーがあれば仲良く戻れる。
愚痴を言い合ったりして元に戻れる。

教頭の事が薄れてゆく・・・

大会前、チーム内で大会後の反省会の費用の事でもめた。
チームでゴタゴタがあると僕らの結束は逆に強まる。
ちゆきさんが僕に色々愚痴を言うから。

そして大会が始まるころには
僕らはすっかり元通り?になっていた。
元通りに・・・見えていただけかもしれないけれど・・・


第十六部 喧嘩 完

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何度も繰り返してきた過ち。
教頭が一人ぼっちになればちゆきさんは
彼をほっておくことが出来ない。

それはわかっていたことだろ?

【だからこそ】
僕は彼女の前では教頭を悪く言う事はなかった。
思いはあったとしても。

彼女が彼の愚痴を言う事があっても僕は言わない。
むしろ「そんな事ないよ」と。「教頭も頑張ってるからね」と。
思いがなかったとしても。

全ては彼女が好きだからこそ。
そんな打算的な自分。

嫉妬に妬かれる。
その感情をちゆきさんにぶつけたなら
彼女の傍にいられるはずもない。

大丈夫なわけないのに
「大丈夫」という他なかった。




飲み会が終わり不安になる僕。
僕は彼女にメールした。

教頭の事はごめんなさい
俺の言い方が悪かった。と。

喧嘩?言い争いの原因は僕にあったのは
間違いがなかったから。素直にそう思った。
僕もソコを直さなければならない。

彼女からメールが来る。

『今日は飲み会さそってくれてありがとう
久しぶりの小学校楽しかったよ

でもごめんなさい 教頭のことでつまらなくなって

いつも教頭はみんなに嫌われてて先生方にもだし
今日飲んでてつくづく思ったの

私がいないとだめなんだって。
私しかいないのねって。

さっき教頭とメールしました。
言われる原因直さなきゃってメールしました。

今日はありがとう
ごめんなさいおやすみなさい』


言葉がなかった。
ちゆきさんを呼ぶべきではなかった。

教頭を責めようとも
教頭がみんなに嫌われようとも
それは結局僕にとっては自分に返ってくる事だった。

だから

そんな自分は最低だと思うけれど

彼女の前では教頭を悪くは言わない。
いや、誰の前でも言う事は止めた。
何も言う事はないのだから。

ちゆきさんの隣
ちゆきさんの傍にいるために

心が押しつぶされそうになるけれど
そんな自分が大嫌いだけど
それほど思いが募っていた。

ちゆきさんを苦しませたくない。

思いをぶつける事も
教頭を悪くいう事も、一人ぼっちになる事も

彼女を悩ませる。苦しませてしまう。
それならば・・・と、思う。

ちゆきさんを癒したい。

僕に出来ることがあるなら
なんだってするつもりだ。

僕が彼女の傍を離れる事以外ならば・・・


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一瞬の仲直り?
それさえもなかったのかもしれない。

「さっきはすみませんでした」

〔俺も言い過ぎた〕

なんて言い合いながらお互いに納得してない。

「でもね、教頭・・・俺の立場もわかってください
俺も幹事で少しでも安くあげようと色々考えてるんです」

〔そうかもしれないけど、お前なんて言った?〕

再び顔色が変わる彼。

「いや・・・すみません」

〔お前は俺に金払えっていったんだぞ?!
そんな事言われたら俺だってキレるだろ?!〕

【お前?】【キレる?】

飲み会の席とはいえ教頭が使う言葉だろうか?

「お前・・・ですか? キレちゃうんですか?」

〔そうだな!俺はキレるよ!あんな言い方されたら〕

もうこの人には何を言っても無駄だと思った。
同時にがっかりもした。

「わかりました・・・もういいです。すみませんでした。」

教頭の興奮は冷めない。
僕はどんどん冷めて心が引いていくのがわかった。

「もうやめろって」
また、誰かが言った。

「ホラ、とりあえず離れて離れて
な、楽しくやろう」

僕は全然納得いってなかった。
カラオケの部屋の事じゃない。
教頭の発言についてだ。

他のメンバーにも愚痴る。
そっと・・・

それでも見えないところで行われたやりとりではない。
カラオケの喧騒の中とはいえほぼ全員が見ていた。聞いていた。

そうだ・・・

ちゆきさんもいた。

僕の暴言よりも
彼のそれのほうが・・・みんなに与えた影響は大きかったよう。
教頭の信用はどうなってしまったんだろうか。

僕はちゆきさんにも愚痴りたかった。
俺も悪かったけどあんな言い方はないだろ?!って。

しかしそれは伝わる事はない。


カラオケも中盤というところで
教頭が僕のところへやってきた。

〔さっきはすまなかった。ごめんな。
俺、これからもあきと仲良くやっていきたいからさ
本当にすまなかった。〕

「いえ・・・俺の言い方が悪かったですから。
俺の方こそすみませんでした。」

教頭は酔っていた。
その気持ちがどこまで本物かはわからなかったけど
仲直りをした。握手をした。頭を下げあった。

僕の気持ちはうわべだけだった。

言葉ではきれいごとを並べる

【俺も教頭先生の事好きですし】
【これからもよろしくお願いします】
【また、前のメンバーでカラオケ行きましょうね】

全部上っ面だった。
今まではそれなりに突っ込んで付き合ってきたつもりだった。
例えちゆきさんの彼氏だとしても。
自分の子供がお世話になっている学校の教頭だし、
彼も頑張っていたのはわかっていたから。


彼の線引きは
年上か年下か
上司か部下か
気に入ってるかそうでないか

誰にでもそういう部分があるのは否めない。

けど

彼はそれがあまりにもハッキリしていた。

上司に諂い
部下に厳しく
年上は必ず偉くて
年下は生意気な口を利くな、と。

最早

先生方も含め彼の味方は一人もいなかった
そういっても過言ではなかった。

しかしその状況は・・・
彼が一人ぼっちになってしまう状況ってやつは・・・

ちゆきさんはほっておけるはずもない。
そんな性格の彼女。

それをわかっていたはずだった。
僕はちゆきさんをこの飲み会に誘った事を

後悔した。


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教頭は僕にヤキモチを妬く。
僕も大丈夫だと思っていたが
やっぱりヤキモチを妬かないはずがない。

気持ちが加速する。
辛い事が増えてゆく。
「大丈夫」じゃなくなっていく。


買出しが終わりカラオケに行くと
みんなは既に部屋に入っていた。
馴染みのカラオケ屋。

仕切りを教頭がしていたようで
人数に不相応な一番大きな一番高い部屋に入っていた。
幹事をしていた僕はそれに納得がいかず不機嫌になる。

割り勘するのになんで一番高い部屋?

教頭はちゆきさんが来た喜びと
酔ったテンションでご機嫌になっていた。
それでも一次会では殆ど接点がなく
心の奥ではイラついてもいたはず。

僕は僕で今までのいろんな事が渦巻き
教頭以外が仕切ったのならそんな事にはならなかったと思う。

「なんで一番高い部屋頼んだんです?」

〔人数もそれなりだし、割り勘だから金もそうかわらないだろ?〕

「変わらないって・・・変わるでしょ?」

〔そんな一人何百円の世界だろ?たいしたことないじゃないか〕

既に酔っ払っている人のソレだ。

「んじゃ教頭がその分払ってくれるんですか?たいしたことないなら」

僕も僕でここまで絡む必要があったんだろうか。

〔お~払ってやるよ!いくら?いくら払えばいいんだ?!〕

完全にキレる教頭。
引く僕。

「もうやめろって!」
誰かが止めに入った。

「みんなで来てるんだから、な?
あきも教頭も・・・ホラ・・」

教頭は僕に暴言を吐かれ
僕は教頭に切れられ
お互いに納得はしていない。

今思えば、僕がやっぱり未熟だった。
余計な一言で人を怒らせる。
ソコを直さなければ成長したとは言えない。
雰囲気を壊し、教頭を怒らせてしまった。

でもきっと

教頭じゃなかったらここまで
噛み付く事もなかったと思うんだ。
それほどまでに僕の思いは・・・


それでもカラオケは始まる
教頭も歌う。
二次会は積極的にちゆきさんは
教頭の隣にいた。ずっと。

僕は教頭に謝る事にした。

「さっきはすみませんでした。
俺の言い方が悪かったです。」

〔いや、俺も言い過ぎたよ。〕

一瞬の仲直りだった

いつものようにちゆきさんを迎えに行く。
この日はPTAの飲み会。地元の飲み会だ。
乗せていくのはちゆきさんだけじゃなかった。
地理的理由で帰りに密会は出来ない。
それは確定していた。

それでも彼女といる事が出来る。
それだけで十分だった。

7時からの飲み会。
僕は幹事だったので6時半には会場入りをした。

僕とちゆきさん、それから数名で。

会場入りすると会長と教頭が先に来ていて
既にビールを飲んでいた。

「お疲れ様です。
今日はゲスト連れてきましたよ~」

後ろの方からひょっこりと顔を出すちゆきさん。

「お~?」

教頭は驚きながらも顔が綻んでいる。
やっぱりちゆきさんは内緒にしてたみたい。
不意な喜び?きっとそんな感じだったんだと思う。

飲み会が始まる。
狙ったわけじゃないけど
僕は偶然にもちゆきさんの隣になってしまう。

教頭を前にまずいかなぁと思いつつ嬉しくないはずがない。
教頭は少しだけ離れた所に座っていた。
PTAの飲み会だからちゆきさんだけを構ってられない教頭。

他の父兄達と学校や教育の話しをしている。
飲みながら・・・だったけど。

それでも彼のテンションはあがっていたと思う。
結構なペースで飲み、ビールと日本酒と。
他の誰かと話しをしていても彼女を気にしながら。

僕は、というと
ずっとちゆきさんと話しをしていた。
まじめな話しなどするはずもなく
バレーの話しや下らない話、下ネタ(笑)

4人くらいで話していたけど
明らかにそこだけ空気が違ったと思う。
そこだけ別空間で楽しそうだったに違いない。

これは僕の予想だけど
教頭はきっとヤキモチを妬いていたと思う。
僕は気づいていたけど、気づかない振りをしていた。

いい感じで一次会が終わり
二次会へ行く事になった。

カラオケ

買出しに行くのは僕だ。
僕はそのまま話で盛り上がった4人で
買出しに行く事にした。
もちろんちゆきさんも一緒。

教頭達は先にカラオケに行っててもらう事にした。

予想外のちゆきさん。
不意の喜び
傍にいれない苛立ち
僕らと仲良く話す彼女
ヤキモチはきっとMAXだったと思う。

そして事件は二次会で起きる。

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