第115話 満たされる心

あの日から僕の心は安定していた。
ちゆきさんには会っていない。
密会を、という意味でだ。

会いたい気持ちはあった。
けれど会わなくても心は満たされていた。

満たされているからこそ
余裕が生まれる。
ちゆきさんへのメールや電話も
楽に出来る。

楽に出来るから彼女を癒す事が出来たのかもしれない。
様々な事を相談された。
ちゆきさんは僕を頼ってくれていた。

会っていないからわからないけれど、
もしかしたら会わないほうが
お互いにとってイイのかも？
その方がお互いにとって安定しているのかも？

そんな風に思っていた。
会いたい気持ちはある。

バレーの愚痴
本大会への不安、期待
教頭以外の男性からのメール
口説かれたとか
デート誘われたとか

「さすがちゆきさん♪俺が惚れた女だね」

『誘われても誰ともどこにも行かないよ
ギュッてするのはあきくんだけだよ』

ドキドキする。
会いたくなる。
でも、会えなくともまた心が満たされる。

僕の感情が変わってきているのかもしれない。
少しは成長したのか？

でも･･･

僕は踏み込んではいけない領域に

足を･･･

今まではただ会いたい
抱きしめたい
キスしたい
愛撫したい
感じたい、感じさせたい。

そればかりだった。

いや、それは今もある。

彼女の味方でいるとか
彼女の事を考えるとか
「思いやる」気持ちは負けないとか

口でそんな風に言っても

実際はただ自分の気持ちを
ぶつけていただけの様な気がする。
自己満足の世界。

不安ばかり抱いていた。

少しずつ、一歩ずつかもしれないけれど

本当のちゆきさんだけの味方になるため
ちゆきさんの心を守れるようになるため

出来る事なら

彼女も僕も

ぐっすりと安眠出来る様な

楽しくて笑い合える様な

そんな毎日が過ごせる様になりたい。

もしかしたら･･･

僕の感情は変化しつつあったのかもしれない。
正確には自分でもわからない。
自分でも戸惑っている。

それでも

その自分の中に芽生え始めていた感情を
自分自身で否定できないでいた。


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ホント･･･どうしましょうね、この感情･･･

　　 　
 
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