第79話 天真爛漫

彼女の事を一言で表すとしたら・・・
そう、天真爛漫がぴったりなんじゃないか。そう思う。

ある飲み会の席で突然彼女は言い出す。

『みんなで温泉行きたいね♪』

なにを言い出すのか？ビックリさせられる事ばかり。

『この4人でさ、この気の合う仲間で温泉行こうよ。
泊まりが無理なら日帰りで。
温泉無理なら健康ランドでもいいしさ♪』

気の合う仲間4人とはバレーの仲間の4人だ。
僕とちゆきさんと後は男女一人ずつ。

4人だと車にも楽に乗れるし動きやすい。
しかも予定もあわせやすいし。
だからここ最近ではその4人で行動する事が多かった。
もちろんその後に僕らは密会をするわけだけど。

ちゆきさんのそんな突然の申し出に戸惑う3人。

彼女はいつもそうだ。
楽しい事を考えるのは得意。
泊まりにいこうとか、パーティしようとか
どっか出かけようとか飲み会行きたいね、とか。

考えるのとか提案するのはいいけど、
そこまで。そこまでして幹事はしない(笑)
楽しい事を考えたり話したりしている時の彼女の目は
いつも輝いていて、本当に楽しそうだ。

こっちまで顔が綻んでしまう。

そして僕は、というと・・・
そのちゆきさんの提案した事を出来得る限り実現する事。
つまり幹事をやる事だ。

その時の提案も他の二人は信じてなかったと思う。
けど、僕はちゆきさんと温泉だろうが、健康ランドだろうが
どこへでも行きたかった。行って楽しくすごして思い出残して、
そして最後に密会をしたかった。

だから僕はその飲み会と密会が終わった後、
家に戻り、すぐにパソコンで色々と調べた。
そして車で1時間程の隣の県の健康ランドを見つけ
その日のうちに個室を予約をした。
日付は冗談半分で「この日がいいんじゃない？」
なんて嘯いていた日に決めた。

自分が動かなければなにも始まらない。
僕はちゆきさんとデートが出来ない。
だからそんな事にでもすがらないと
二人きりにはなることが出来ない。

だから僕は進んで幹事をやる。
面倒なんてことは一つもない。
彼女に会えるのだから・・・

にわかに決めた日取りと場所だったけれど
半ば強引に決めた事だったけれど
結局、その4人でその場所へ行く事になった。

バレー大会でもないのに
朝から晩まで一緒にいられる・・・
ワクワクしないはずがない。
例え二人きりじゃないとしても。

何かが起こるような気がした。
帰りに会える保障は未だにない。
けれどその日は・・・

ちゆきさんにキスをもらったたった4日後だった。


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