第13話 密会

第四部　密会

キスをした日…
あの日から僕達の奇妙な関係が始まった。

僕には妻がいる。子供もいる。
ずるいかもしれないけど、妻の事は愛している。子供も。

でも彼女が好きだ。

彼女と純粋に会えるのはバレーの時、
バレー大会の時、なにかの飲み会の時だ。

彼女は今年、子供とともに学校を卒業していた。
学校では会えない。

教頭とちゆきさん。
二人を縛るものの一つがなくなってしまった。

僕らはあの日から密会を続けている。
何故、彼の事を好きな彼女が僕と会ってくれるかはわからない。

密会といってもバレーの帰りや飲み会の帰り、
時間も長くて1時間短い時は15分。

関係も男女の深いそれではなく、手を繋ぎキスまで…

それで充分だった。

3年間片思いで、憧れていた大好きな素敵でカワイイ女性が。
不倫とはいえ彼氏がいるあなたが。
僕のために時間をつくってくれてキスまで委ねてくれる…

幸せでないはずがない。



その日は最初から二人ともおかしかったのかもしれない。
いつもなら彼女はシンデレラよろしく12時には家に帰る。

例え二人きりになるチャンスがあるとしても
12時になると魔法がとけてしまうのかもしれない。

しかしその日はその12時をまわってから会った。
飲み会の帰り、どうしても二人きりになりたかった僕は彼女に電話した。

『ちょっとだけでいいからあえませんか？』

もちろん会ってくれるなんて思っていない。
いつだって主導権は彼女にある。

『いいよ　ちょっとだけね』

僕らは人目を偲びあのキスをしたグラウンドに向かった…

つづく