第78話 もらったキス

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第77話 全てを奪い去るように

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第76話 好きという階段

離れたり近づいたり
ちゆきさんのココロは一体どこへ向かっているのか？
僕には決してわからないのか・・・

深いキスをしてから心が通じ合ったと思ったけど
その後急に冷たくされて・・・
なにがなんだかわからなかったのに
また密会をして深いキスをする。

その週はちゆきさんと3回も密会をした。
週に3回も会うなんて初めてだった。

最初はバレーの帰り
次がカラオケの帰り
最後バレーの試合の帰り

奇跡のような一週間だった。

約束してたのはカラオケの帰りだけ。
それもちゃんと約束してたわけじゃない。

バレーの帰りと試合の帰りは急遽電話して
「会える？」と聞いたものだった。

その週のちゆきさんは優しかった。
その抑揚のもとがどこから来るのか・・・
どうしてそんなに会ってくれたのか？

どの密会でも深いキスをした。
深い深い・・・
そんな事をしたらもっと好きになっちゃうよ？

いろんな事我慢できなくなってしまう。
教頭の事だって
メールの事だって
電話したい気持ちだって
いろんな事・・・我慢できなくなっちゃうよ？


そのどれもこれもが

もし、ちゆきさんの気まぐれだとしたら

それはあまりにも残酷で

僕にとっては辛い事だ。

でも

そのどれか一つだけでも

僕を思っての事だったなら

どんなに小さい事でも

たった一つだけだとしても

僕を想っての事だったなら

僕の心は満たされ

そして救われるような気がした。



こうして週に三日も会ってくれるだけでも
幸せだったはずなのに・・・
いけないと思いつつ
ダメだと思いつつ

そう・・・

これ以上

ちゆきさんを好きになったらいけないと。

そう思いながら

僕の心は次の段階へ進もうとしていた。

その階段の先は見えない。
その階段はひどく脆いものかもしれない。

いや・・・

もしかしたらもう・・・

僕はその階段の途中にいるのかもしれない。

まだ引き返せるのか
先は続いているのか

足元は暗くなにも見えないままだ。


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第75話 バタフライキス

その日は前に約束した飲み会の日。
初めてちゆきさんのお勧めの焼き鳥屋へ行った。
気の合う仲間4人で。

僕ら以外にも飲み会が多いちゆきさん。
中々旦那さんにも本当の事を言えないという。
この日も中学の役員会の後、ちょっと食事会をする。
そういって家を出たそうだ。

いつも飲み会などで僕が運転手をする時。
大概はちゆきさんを最初に迎えにいく。
しかしこの日はちゆきさんは役員会と言っていただけに、
自分の車で出かけ、途中車を置いて合流した。

合流前にちゆきさんに電話する。

「自分の車で行ったら飲めないじゃん？」
そういうと
『大丈夫だよ、そんなに飲まないし。』

･･･そういう問題じゃないような気がする。

「そ、それから今日、帰りちょびっとでいいから会える？」

『うーん、今日は役員会って言ってるから早く帰らないと。
だから無理かな』

ずっと断られて、メールも冷たくされてすごく不安だった。
この日も会えないと言われて不安的中。

ちゆきさんお勧めの焼き鳥屋は店長が知り合いだった。
色々とサービスしてもらい、料理も美味しく
話も弾んだ。しかし僕の心は弾まない。

飲み会は終わった。

みんなをそれぞれ送り届けて
ちゆきさんが車を停めている駐車場まで刹那のドライブ。

「ちゆきさん、今日どうしてもだめ？
まだ10時だしちょっとだけでもいいからさ・・・」

車で運転して帰らなきゃないのにちゆきさんは少し酔っていた。

「酔いも醒ました方いいと思うんだ。」

『うーん・・・本当ちょっとだけだよ？』

半ば強引に誘い、ちゆきさんが軽く酔っていたから
なんとかなったのかな？
殆ど拝み倒すような形で二人きりでいつもの場所へ向かった。

ちょっとなんていいながら、1時間20分一緒にいた。

1時間はおしゃべり。

お出かけの事とかカラオケの事、バレーの事なんか。

11時になって帰る時間に。

そこから抱きしめたくなる。
いや、最初から抱きしめたかったはず。

すぐには抱きしめない。
ちゆきさんに『ハグ』していい？と聞く。
彼女はなにも答えない。
鼻と鼻がぶつかるくらいの距離まで近づく。
体には触れない。

そして同じ事を聞く。

『ハグしていいですか？
ダメならダメって言って。ダメならしないから。』
まだなにも言わないちゆきさん。

黙ってハグする寸前まで近づく。
でもハグしない。

しても良さそうに感じる。
でも我慢する。

キスするくらいくちびるが近づく。
まつげとまつげが重なる・・・
まつげとまつげのキス。
「バタフライキス」っていうんだって。

でもハグはしない。

『ね？ハグしてもいい？』耳元で囁く。

そして遂にちゆきさんは黙ったまま小さく頷いた。

そこで初めて抱きしめた。
長く、強く。
耳にキスした。

そしてまた…僕らは深いキスをしてしまった。

心も体も溶けてしまいそう･･･
まるで麻薬のよう･･･

いくらキスしてもたりない。

20分、ハグとキスと愛撫を繰り返した。

また…好きだと伝えてしまった。


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第74話 僕の役割

メールが来てからしばらく考えた。
どうしたらいい？

僕の役目はなんだ？
ちゆきさんを困らせる事か？

ちがうだろ！

楽しませる事じゃなかったのか
ちゆきさんの味方でいることじゃなかったのか
ただ・・・楽でいてもらう事じゃ・・・

そして電話をかける
コール音が胸の奥に響く

『はい　もしもし・・・』
ちゆきさんは電話に出てくれた。

「ちゆきさん・・・さっきはごめんね。
俺もわかってるつもりだったんだよ？
思いつめるとかそういうんじゃなくてさ・・・
ただ会いたいって思っちゃっただけなんだ

でもごめんね、ちゆきさんを困らせちゃって
ちゆきさんを楽しませるのが、笑ってもらうのが、
俺の役目なのにね！」

精一杯明るく言った。

『あきくん・・・やっぱりわざわざ会うのは無理だよ。
わかるでしょ？私は教頭とつきあってるんだし、
飲み会とかバレーの帰りにちょびっと会うのと
改めて会うのはちがうでしょ？』

どこが違うのかわからない。
わからないけど・・・

「そうだよね！うん！そうだ！」
と言った。

「ちゆきさんと楽しくいられるように
これからも色々たくさん遊ぼうね！
ね？それくらいはいいよね？
だって俺にはそれしか・・・ないんだよ？」

せめてもの抵抗

『う、うん・・・　そうだね・・・
ちょっと微妙な気もするけど
飲み会とかカラオケはいいよ♪』

歯切れが悪かったような気もするけど
ちゆきさんはそう言ってくれた。

「ちゆきさん・・・ありがと♪」

「とりあえずさ、来週にでも飲み会出来るように調整します。
都合のいい日とか悪い日とかある？」

鉄は熱いうちに打て
じゃないけどちゆきさんと会うためなら
どんな労力も苦にならない。

そうやって僕は飲み会の約束をした。

電話を切った後、
メールをもらった直後の絶望感は消えていた。

けれど心が晴れていたわけでもなかった。

そして僕の心は繰り返す。

あの夜はなんだったの？
あのキスはなんだったの？と。

近づいても離れても
優しくされても冷たくても
僕はいつだって困惑している。

でもやっぱり僕はちゆきさんが好きで・・・
いろんな事は思うけれど
嫌いになんてなれなくて

ちゆきさんの笑顔をみるために
また今日もちゆきさんを思う。

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