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好きな女性との出会いからの全て
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ヒカルをやっとのことで送り届け、
僕は二次会場へ向かった。

殆どの人が二次会に来ていた。
この日の会の楽しさを物語るかのように。

ちゆきさんは?

見ると男達に囲まれていた。
とても僕が近づける雰囲気ではない。

「ただいま」


みんなが口々に言う。

どこ行ってたの~?
時間長すぎるよ(笑)
怪しいよね~ 

「なんでもないですよ^^;
ヒカル具合悪くなって介抱してたんです。」

ちゆきさんをちらりと見るけど
僕の事は気にとめる様子もない。

少しがっかりした。

あやこさんが僕のところへやってきた。

〔大丈夫だった?〕

「大変でしたよー」

僕はあやこさんにヒカルとの出来事を話した。
ヒカルが僕に抱きついてきた事だけを除いて。

〔そっかそっか~ 大変だったね~
ご苦労様でした。〕

僕がついて間もなく二次会も終わった。

今日は楽しかった♪
またこんな企画頼むな!
素晴らしい試みだったよ


僕らの悪巧みで始まったこの企画

僕はちゆきさんやあやこさんに許して欲しくて
ただ頑張った。

その結果は奇しくも

僕の評価を高めるものとなってしまった。

帰り_

僕らは密会をした。

いつものようにキスをしてハグをして愛撫を・・・

1ヶ月会えなくても頑張れたのに
またすぐに会いたくなる。
のめり込んでいく。メロメロになる。

僕の心は再び加速し始めていた。

『あきくん途中いなかったよね?
どこいってたの?』

「えー!知らなかったの?ヒカルを送っていったんだよ。」

『全然わからなかった(笑)』

「大変だったんだよ。ヒカル吐いちゃってさ!
それで俺にすっごく謝ってきた。」

『ふ~ん・・・それで?』

僕はヒカルとの事を全部ちゆきさんには話した。

『ヒカル・・・あきくんの事、好きなんだね』

「え~そんなわけないでしょ(笑)」

そんなわけないと思いながら、
心では少しそう感じていた。

『いや、わかるよ。ヒカルはあきくんの事好きだよ』

「俺が好きなのはちゆきさんだけだよ」

『本当は寄りかかられた時抱きしめたんじゃないの?
キス、しちゃったんじゃないの?(笑)』

「そんなこと出来る訳ないでしょ」

『でもみんなあきくんがいない!帰ってこない!
って騒いでたよ(笑)みんな怪しんでた。』

「しかたないでしょ!ヒカル具合悪くなったんだから」

『その優しさがあきくんのいいところだよね・・・
その優しさにヒカルも・・・』

「ちゆきさん、俺がヒカル送っていったの知ってたの?」

『・・・知らなかったけどあやちゃんが教えてくれた(笑)』

「やきもち妬いた?」

『・・・少し・・・ね』

「そ、そうなんだ・・・」

『でもね、あやちゃん興奮してたよ』

「なにが?」

『あきくんがヒカルを一人で送っていくって
あたしも(あやこさん)送っていくって言ったのに
一人で送ってきます!ってさ(笑)
あきくんヒカルの事好きなんじゃない?!ってさ(笑)』

「マジで?!」

『うん、マジで(笑)』

「ちゆきさんが好きなのに・・・
あーでも、あやこさんにはそう思われてるほうがいいか」

『なんで?ヒカルがあきくんを好きなのに?』

ちゆきさんは少し怒ったように言った。

「え~だって、ちゆきさんと疑われるよりいいでしょ」

『あやちゃんはさ、年末の事も知ってるし
あきくんとヒカルがあやちゃんちでコソコソ話してたのも聞いてるから
完全に疑ってるね!あきくんがヒカルを好きだってさ』

「まぁそう思ってるならそれでもいいや、俺。」

『あたしはなんか嫌だ(笑)』

僕にヤキモチを妬いていてくれてるのかと思った。

『ヒカルがあきくんを好きなんだよ!ってあやちゃんに言おうかな(笑)』

「また!余計な事言わなくていいから(笑)」

『えー!だってなんか納得出来ない』



「それよりちゆきさん?」

『なに?』

「今日楽しかった?」

『うん♪』

「俺、頑張った?」

『うん、誉めてあげる』

「あ、ありがと・・・」

『みんなすごく喜んでたじゃん
またやりたいね~って。』

「うん、そうだね。みんなにすごく誉めたらた。」

『良かったじゃん』

「良かった・・・のかな?」

『良かったんだよ』

「でも、俺は罪悪感なんだよね」

『いいから、それはあたし達の中だけで終わってるんだし。
みんなは喜んでくれたんだよ?
あれだけの人数を動かして喜ばせるなんて
誰にでも出来る事じゃないんだよ?
あきくんはすっごく頑張ったよ♪』

「そ、そうかな・・・」

自分がした事が赦されるとは思わないけれど、
結果としては大成功に終わった。
それが唯一の救いだった。

「これで去年の年末の事はゆるしてくれるの?」

『うん、ゆるしてあげる(笑)
もうなんとも思ってなかったけどね(笑)』

「えー!そうだったの?
俺は禊ぎだと思って頑張ったのに。」

『いいじゃん、楽しかったんだから♪』

そういうとちゆきさんが僕に近づいてきてハグをくれた。

抱きしめるその力は意外にも強く、
僕はドキドキが止まらなかった。

「ど、どうしたの?」

『あきくん頑張ったからご褒美』

そして僕らはキスをした。
熱く、深いキスだった。


僕の禊ぎは終わった



第二十一部 禊ぎ  完

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あやこさんは帰ってこない僕を心配してたのか。
それとも送られていったヒカルを心配してたのか。

二次会は既に始まっていた。

帰ってこない僕らを全員が心配し怪しんでいたようだった。

ちゆきさんには黙って出てきた。
その事は当然ちゆきさんの耳にも入ったようだった。

「今、ヒカルの家の前まで来ました。
もうすぐ戻れそうです。」

そう言って電話を切った。
事実ヒカルの家の前まで来ていた。

「さ!ヒカル?大丈夫か?車降りれるか?」

〔ゴメンなさい・・・みんな心配してますよね・・・
でも気持ち悪いんですぅぅ〕

「大丈夫だよ、家ついたから。
さっきの水とクスリ飲んで早く寝た方がいいよ」

早く戻らないと・・・
そればかり考えていた。
ここまで遅くなるとは思ってもいなかったし、
ヒカルが帰りたがらないなんて・・・


やっとの事で車から降りるヒカル

今度は門のところで座り込んでしまった。

「ホラ!ヒカル!しっかり立って
歩けるか?帰ろ。」

ヒカルを半分強引に立たせると_

再び、ヒカルは僕に体を預けてきた。
僕の胸にヒカルの顔が埋もれる。

ヒカル・・・

抱きしめて欲しいのか?
キス、して欲しいのか?
俺のこと・・・もしかして・・・好きになっちまったのか?!

そう思わずにはいられなかった。

ヒカルの事は好きだ。
メールで癒されもしたし、可愛いと思う。
僕も思わせぶりな事をしたつもりもなかったけれど、
メールでは色々話してきた。
相談にもたくさん乗ったし、愚痴も言い合ってきた。

しかしそれは・・・

全て・・・

ちゆきさんとの関係の心の隙間を埋めるためのものだった。

僕は寂しさをヒカルで紛らわしていた。
ヒカルを利用していたんだ。

僕がヒカルを抱きしめられるはずもない。

〔どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?〕

そう繰り返すヒカル。

「ほっとけるはずないだろ?」

その言葉さえもヒカルの心には突き刺さったのだろうか?

僕はヒカルを抱きしめずに頭をくしゃくしゃにした。

「たくさん酔っちゃったな。
とにかく今日は帰って休もう
また今度飲みに誘うからその時たくさん話そう。」

ヒカルが納得したかどうかはわからない。

〔絶対誘ってくださいね〕

肩を抱き、やっとのことで玄関までたどり着いた。

「ここで大丈夫か?」

〔はい、ありがとうございました。〕

「おやすみ」

〔おやすみなさい・・・〕

僕はヒカルから解放された。
言葉は悪いけどそんな気分だった。

【早く戻らないと】

時間は既に1時間半は経っていた。
今思えば・・・ 
あやこさんと二人で送っていくべきだったのかもしれない。

後部座席にヒカルを乗せて僕は車を出した。

片道15分程の距離

ヒカルはひっきりなしに謝っている。
スミマセンスミマセンと。

と_

〔きもちわるい・・・〕

「ん?ヒカル大丈夫か?吐きそう?」

〔吐きそうかもしれません・・・うぅ・・〕

「吐く?」

〔吐きそうかも、あぁ・・・ごめんなさい・・〕

「あやまらなくていいから!
ちょっとまってろ、今車停めるからな。」

僕は河土手に車を寄せた。
冷たい風が吹き抜ける河土手に。

〔げほっげほっ・・・〕

「ヒカル寒くない?」

〔寒い?熱いです・・・ごめんなさいい〕

「そか、ならいいよ」

2月の冷たい風が二人を突き抜ける
僕はただ黙ってヒカルの背中をさすり続けた。

〔吐きたいけど吐けない・・・苦しいです
どうしよう・・・どうしよ・・・あきくんごめんなさい〕

「俺は大丈夫だから、心配しなくていいから
指・・・つっこんでやろうか?」

〔自分でやります・・ぅぅ・・〕

やっとのことでヒカルは少しだけ吐いた。
でもきっとそれはとても恥ずかしい事だったのかもしれない。

〔あーもう最悪だ・・・気持ち悪い・・・
あきくんあたしのこと嫌いになりますよね?〕

「ならないよ。大丈夫だよ」

そういいながら僕はちゆきさんの事を考えていた。
ちゆきさんには何も言わずに出てきた。
時間的には1次会が終わる頃。
少しは僕がいない事を心配してくれているだろうか?

「ヒカルが大丈夫なら帰ろうか?」

〔ぅぅ・・・体がおかしいです。寒いのか熱いのかわからない・・・
苦しいですぅ・・・ あぁ・・もう 車は熱いから乗りたくないです〕

「そっかわかった・・・」

そのまま河土手でヒカルの背中をさすり続ける。

電話が鳴った。

あやこさんから

僕が遅いので心配してくれたみたいだった。
僕のかヒカルのかはわからないけれど。

事情を説明してもう少し遅れる事を伝えた。
二次会に移行しててくれとも。

ヒカルはまだ謝っている。
でも、帰ろうとはしない。

僕は戻りたかった。
でもヒカルを放っておくわけにもいかない。

〔どうしてこんなにあたしのことしてくれるんですか?〕

ヒカルは本当に酔っていたのかな?
鋭く質問をぶつけてきた。

「どうしてって・・・こんなヒカルを放っておけないだろ?」

〔ごめんなさい・・・もう・・・こんな自分嫌だ・・・
絶対あきくんに嫌われちゃう〕

「そんなことないって!大丈夫だから!
嫌いになんてならないから。
酔ったら誰でも通る道だろ?」

ヒカルには始めての経験だったようだ。

「ヒカル、ここにいたら風邪引いちゃうよ。
とりあえず頑張って帰ろう。
で、帰ったら水のんで寝た方がいい。」

〔帰りたいけど、帰りたくないです。〕

ヒカルが感情をぶつけてくる。

「そっか・・・でもちょっとだけ頑張ってみよ?
な?立てるか?」

ヒカルはふらふらと立ち上がる。
肩を抱きながら車に乗せようとした刹那・・・

ヒカルは僕に体をあずけてきた。
僕に寄り添ってきた。

はたから見たら抱きしめているように見えただろうか?

拒みはしなかったが、ヒカルを抱きしめる事は出来なかった。

「しょうがねぇな~大丈夫か?」

そう言って頭を撫でながら大人ぶるのが精一杯だった。

ヒカルは離れない。
ゴメンなさいゴメンなさいと繰り返している。

「俺は大丈夫だから・・・
だから、今日は帰ろう?」

〔本当はあきくんともっと話がしたかった・・・〕

「ああ・・・そうだな。今度またたくさん話しよう」

帰りたがらないヒカルをやっと車に乗せて
再び車をだした。

コンビニに寄って、クスリと水を買った。

「コレ飲んで今日はぐっすり寝るんだぞ?」

やっとヒカルの家に着いたとき
既に一時間が過ぎていた。

再び電話が鳴る

あやこさんからだった。


試合当日

僕はどうしようもない不安に襲われていた。

今日一日最後まで上手く行くだろうか?

ちゆきさんに不安をこぼす。

ちゆきさんは『大丈夫だよ』といってくれた。

最初の目的は不純だったけれど、
試合は別だと思っていた。

今年最初の試合。
そしてそれなりの人数が集まる。



結果_

試合は大成功だった。
僕が主催したとは思えないほどの人が集まり
大盛況で試合は終わった。

マリもタツヤもタツヤの彼女もみんな来ていた・・・

目的の半分は達せられた。

試合が終われば慰労会。

大会の度にチーム毎になら行われていたが
合同で、というのも初めての試みだった。

あやこさん達が見たかった、飲み会の席での
魔のトライアングルは実現しなかった。

マリとタツヤは参加したけれど、
タツヤの彼女は飲み会は不参加だった。

そして飲み会が始まる

〔たくさん話ししましょうね♪〕

ヒカルにそう言われていた。

「そうだな!たくさん話しよう」

でも実際の僕は接待の側だったので
そんな暇はなかった。

足りないものがあれば買出しに行き、
なるべく頑張って全体を気遣った。

慰労会は大盛り上がりだった。

本当の目的は誰も知らない。

あやこさんもちゆきさんも
当初の目的なんて忘れて
目一杯楽しんでいるように見えた。

禊ぎは終わったのかな・・・

そう思いながら、
みんなが楽しんでいるなら良かったのかも
そう感じていた。

残り30分

まだまだ終わる気配はない。
二次会も!そういう声も聞こえてくる。

〔ヒカルがいない?!〕

あやこさんが言った。

どこへ行った?

慌てて探すと外で酒に潰れて寝ていた。
まだまだ寒い日だった。

「ヒカル!こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ?」

〔ん~大丈夫で・・す・・なんか暑くて・・・〕

完全に酔っ払っている。
ヒカルとは数回しか飲んでないけれど
酒に強く、酔っ払う姿は見た事がなかった。
詳しく聞くと、色んな種類の酒を色んな人に注がれ、
注がれるがままに飲んでいたようだった。

ヒカルは可愛くてマスコット的存在。
みんなに好かれている。

だから、色んな人に話しかけられ
たくさん酒を飲んだみたい。

〔あたしにみんな話しかけてくるんです・・・
お酒も・・・ あたし疲れちゃって・・・〕

「うんうん 大変だったな
とりあえずこんなとこで寝てたら風邪引くから中いこう?」

〔暑いんです・・・中は嫌です・・・
きもち・・わるい・・〕


《あきくん大丈夫?》

心配したあやこさんが様子を見に来た。

「ダメみたいですね~
連れて帰った方がいいかも」

この時点で飲んでいないのは僕だけ。

《あたしも一緒に行こうか?》

「そうですね・・・
いや俺、送っていきますよ
あやこさんはみんなをお願いします。」

残り時間も少なくなる中

僕はヒカルを一人で送っていく事になった。

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僕の心はざわついていた。

『あたしの事全部わかってる?』

そんな質問をズバッとぶつけてくる彼女

「え?俺はかわってないのかな?」

僕はなにか、ものすごくショックだった。
きっと顔にも出ていたと思う。

「体のことは全部わからないよ。全部見たことないし・・・
でも、心も・・・ちゆきさんが言ってるのは心の事?
俺ってばちゆきさんの心、理解してない・・・のかな?」

自分でもなにを言ってるのかよくわからない。

『ごめん、そういう意味でいったんじゃないの。そんな顔しないで・・・
・・・ううん、なんでもない。今言ったこと忘れて。』

「なんで?忘れられないよ・・・
ちゆきさんの事、今までなんにもわかってなかったって?
俺が? ちゆきさんはそう思ってたってこと?」

僕は全然冷静じゃなかった。
ついさっきまでキスしてハグして愛撫まで・・・
キスさえももらっていたというのに。

『ごめんね、あきくん。
でも、このままのこんなバカなあたしでいいの?』

「馬鹿とか思ってないけど、そのままのちゆきさんでいて欲しいと思うよ?
そのままのちゆきさんを受け止めたい。自然なままの。」

『ありがとう』

それでもなにか物悲しい僕は釈然としない。

「ちゆきさん・・・ 俺はあなたにとって
必要な存在ですか?」

またバカなことを聞くな

『必要な?ん・・・存在かも・・・ね』

「その程度なんだ」

『ううん、必要な存在だよ!
心の支えみたいな感じ・・・かな』

ちゆきさんはその場を取り繕うかのように言った。
そうじゃないかもしれないけど、僕にはそう感じた。

『あきくんはあたしにとって大事な人だよ。
楽しい人、元気をくれる人。
だから・・・そんな顔しないで?』

僕は目が虚ろだったかもしれない。

不意に彼女が近づいてきた。

「なんだか切ないよちゆきさん・・・」


_まて


僕の役目はなんだ?
彼女を元気にしてあげる事じゃなかったのか?
なにを不貞腐れているんだ?
そんなんじゃダメだろ!

自問自答を繰り返す。


「ご、ごめん、ちゆきさん・・・ 俺・・・
う、ううん大丈夫!俺は大丈夫だよ!
落ち込んだりしてごめん!」

『あたしこそ変な事いってごめんね』

彼女があまりにも近いから僕はつい抱きしめてしまった。

「ごめん」

耳元で囁くと、彼女は小さく横に首を振った。

『もう帰らないと』

時間は既に1時間半も過ぎていた。

「そうだね」

運転席に移りたくない僕。

キス_ したかったけど、出来なかった。

「ちゆきさん?」

『はい』

「俺たちってどんな関係なんだろうね?」

『バレーを一緒にして頑張って優勝目指す(笑)』

「それだけの関係?」

『それだけじゃないけどさ・・・
あたしにもよくわかんない。』

「そっか・・・俺もよくわかんないや(笑)」

『でもね』

「うん」

『あきくんといると楽しいよ♪
これだけは確かなことかな。』

「あ、ありがと・・・嬉しいよ」

『大勢でいても、二人きりでいても・・・ね。
教頭以外で会ったりするのもあきくんだけだし。』

「光栄です(笑)」

運転席に移って帰る準備をする。

助手席に彼女の上着があった。

「ちゆきさんの匂いするかな?」

そういって僕はその白い上着を手に取った。

『いやだ~なにしてんの(笑)』

「匂いするかなと思ってね(笑)」

僕はそれをフワッと顔に近づけた。

アレ?

あまり匂いしないな・・・
無臭?

『あきくん・・・』

ちゆきさんはクスリと笑っている。

「あれ?」

よく見たらちゆきさんはもう上着を着ていた。

『それ・・・あきくんのじゃない?(笑)』

「あれれ(笑)俺のだ」

『ちょっと!ウケルんだけど(笑)』

なにかものすごく恥ずかしかった。
匂いなんてするわけない。
自分の服だったんだもの。

「やべ~すっげ~恥ずかしいじゃん」

そういって僕は運転席のリクライニングを全開に倒した。

『あきくんのそういうところ・・・好きだよ』

そういって彼女はまた、僕に覆いかぶさってきた。

唇が重なり合う。

夢みたいだけど、現実だった。

『さ!帰ろ♪』

「う、うん・・・」

『あきくん?』

「はい」

『誕生日ごめんね。
でもあたし、来年も忘れるかもしれないから(笑)』

「ううん、ありがと・・・
忘れたりするのがちゆきさんだって
俺、わかってるから(笑)
今日はすっごく楽しかったです。」

『あたしも久しぶりに楽しかったよ♪』

「ちゆきさん・・・」

『な~に?』

彼女は楽しそうに笑顔を浮かべている。

「俺は確かにちゆきさんの事全部理解してないかもしれない。
でもね・・・ ずっとあなたの味方ですから。
だから、愚痴とかたくさん俺に言ってくれるのも嬉しいんだけど、
もっともっと、いろんな事、俺に頼ってください。
それが俺の一番の望みです。」


それが本当に一番の望みだったかどうかはわからなかった。
本当はもっと、他の事を望みたいかもしれないけれど。

そう言うのが今の僕の精一杯だった。

『うん、頑張るね♪ ありがと、あきくん』

来年の僕の誕生日にはどうなっているんだろう?

その答えは誰にもわからない。
わからないけれど、楽しい1年になればいいな。

そう強く感じた。


練習試合と親睦会は

3日後に迫っていた。


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