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好きな女性との出会いからの全て
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全てを受け入れてくれた・・・

と、言っても僕らが一線を越えたわけではない。

ただ僕が彼女を抱きしめ
愛撫し、キスを拒む事はしなかった。

僕は今までよりもずっと強く抱いた。
彼女は僕を優しく抱き返してくれる。

キス・・・
そう、僕はまだ怖かった。
深く、ちゆきさんの心の奥に届くようなキス
それが出来ないでいた。

この時もフレンチキス
それ以上のキスをしていた。
彼女も拒まない

けど
それ以上の深いキスは拒まれるような気がして
怖くて自分からは出来なかった。

それでも愛撫を続ける
彼女は感じている
僕も感じる

そのままどんどんエスカレートしてしまいそうだった。
『ごめんね・・・』
その言葉が頭をよぎる

今日が最後?
ちゆきさんと二人きりで会える最後の日?

僕にはわからない

男女の一線を越えるずっと手前で
僕は彼女から離れた。

そしてもう一度彼女を優しく抱きしめて

「ちゆきさん・・・
俺、いっつもわがままばかりでごめんね。
でもありがと・・・ちゆきさんの時間、大切な時間
俺にくれて。

今の俺にとって何よりも大事なのはちゆきさんとの時間なんだ。
こうやって二人きりで会って
会うたびにエスカレートしていってしまいそうで・・・

魅力的なちゆきさんを目の前にして我慢できるか
わからないけど努力するからさ。

だから
だからちゆきさん?
今の俺にとって何よりも大事なちゆきさんとの時間を、
宝物のようなこの時間を
俺から奪ったらいやだよ?」

涙を精一杯堪えて
彼女の耳元でささやく

彼女はだまってただうなずいている。
そして僕を優しく抱きしめてくれる

もう帰る時間だった。

「もう帰らないとね。帰ろっか」
そう言うとちゆきさんはまた、黙ってうなずいた。

振り返ると
僕はいつも彼女に甘えてばかりいた。

別れ際

彼女は最後まで黙ったままだった。
最後に『おやすみ』とだけくれて・・・
いつもとは違う儚さを感じた。

もうこれで最後なのかな

そう思った。



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「ちゆきさん!」
そういって僕は彼女に抱きついた。

『ごめんね・・・』
彼女にそういわれて切なくて悲しくて。

なにがごめんね?

僕の気持ちに応えられなくて?
教頭のことが好きだから?
好きでもない僕と一緒にいるから?

ちゆきさんが僕の事をなんとも思っていないなら
どうでもいいと思っているのなら
嫌われたっていいと思っているのなら

ただ僕の事を突き放せばいいわけだ。
『ごめんね』とも言わないはずだ。

わかっている!
わかってはいるんだけれど
その言葉は一番聞きたくない。


彼女が僕を切り離しきれないでいる事
教頭がいるのに僕と会ってくれる事
教頭がいるから気持ちに応えられない事

全部わかって僕は彼女といる

自分の気持ちを押し出したなら
ちゆきさんは苦しむ
僕はちゆきさんに安らぎを与えたい

なら、なにもしないのが一番いいのかもしれないけれど、
一緒にいてそうしたいんだ。

そして

僕の気持ちが重くなった時に
ちゆきさんが板ばさみになった時に

僕は彼女の元を去るべきなのかもしれない

それでも

好きな気持ちを簡単にはおさえられない。
気持ちはあふれ出る
涙もあふれていた。

僕は彼女を抱きしめながら言った

「俺だって・・・
俺だってちゆきさんの事好きなんだよ!?」

これほど強く言ったのは初めてだった。

『もう(あまり)会えない』
と宣言され、今日が最後かもしれない。

ちゆきさんと一緒にいられるのも
ちゆきさんに触れられるのも
触れてもらうのも

最後かもしれない。

僕は強く彼女に気持ちをぶつけてしまった。

彼女は僕を優しく抱き返してくれた
そして僕の頬の涙を拭いながらこういった

『うん・・・わかってる、わかってるよ』

彼女はそのまま優しく僕を包んでくれた。
後はなにもいわない。

僕は甘えてそのままちゆきさんを抱きしめ続けた。
そして何度も名前を呼んだ。

そのままキスをした。
あのキス以上のキスをしたような気がする。

けれど

ちゆきさんの心へ届く深いキスは出来なかった。

本当に最後だと思ったのか
本当に最後なのか

僕は

ちゆきさんを抱きしめ、触れ
愛撫をしてしまった。

彼女は

全てを受け入れてくれた


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第九部 旅行

その日は前から決まっていた飲み会だった。
僕がうそをついた日よりも前に。

あの日僕はちゆきさんを傷つけるつもりもなかったけれど
結果的には傷つけてしまった。
そしてそれは全て自分にも返ってきた。

『もう会えない』

と、言われたわけじゃなかった。
けれど、きっとそれと同じ意味なんだろう。
そうなんだろう・・・と感じていた。

みんなでもんじゃ焼きを食べた。
楽しく焼いて、楽しく食べて、楽しく飲んで。
僕の心はどこへ行ってしまったのか。

笑ってはいても心はそこにはなかった。

12時には帰らないといけない彼女
飲み会が長引けば長引くほど
二人きりになれる時間は短くなる。

「早く帰りたい」
僕はそれだけを思っていた。

でも今日
彼女は二人きりで会ってくれるのか?
そんな不安も胸をよぎる

全てが終わりみんなを送り届け、
ちゆきさんと二人きりになったのは23時だった。

今日の彼女は酔っている
そして、彼女の家が近づいた頃
彼女は眠ってしまっていた。

「ちゆきさん?寝ちゃったの?
このままいつもの場所行っていい?
ちゆきさん?ね?」

彼女の返事はない。

僕はそのまま車を走らせてしまった。


車を停める
彼女を見つめる
彼女は寝ている
寝息をたてている

キスしたくなった

手を伸ばせばすぐ届くところに彼女がいる

幾度となく、今まで幾度となく
この距離で彼女と接してきた。

彼女が寝返りをうつ
吐息がもれる

抱きしめたくなった

手を伸ばせばすぐ届くのに
すぐそこにちゆきさんがいるのに
なにも出来ないでいた。

そのまま1時間

僕はただちゆきさんの寝顔を見ていた。
ただとなりで座って


0時

帰らなきゃいけない時間

僕はちゆきさんを起こした
起こしたくなかった

そのままずっと彼女の寝顔を
ただずっと・・・
時間なんてなくなればいい
そう思った。

『ん・・・あきくん?
あたし寝てた?んん・・頭痛い』

「ちゆきさん・・・
もう12時だよ。もう帰らないと」

『うん・・そうだね』

キスしたい、抱きしめたい
そんな思いを胸に秘め
僕はただ黙っていた

『あきくんごめんね・・・』

ごめん

僕が一番聞きたくない言葉だ

「ちゆきさん!」

そういって
僕は彼女を抱きしめてしまった。

僕の目から涙がこぼれていた。


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